花粉症治療薬シダキュアとは??

鼻炎・鼻水薬について

今回の記事では花粉症治療薬のシダキュアについて解説したいと思います。シダキュアは他のアレルギー治療薬と何が違うのか、注意点はあるのか、今で服用すればいいのか等、気になる人はぜひ続きを読んでみてください。

シダキュアは他のアレルギー治療薬とは何が違うのか?

シダキュアスギ花粉舌下錠とは

シダキュアとはスギ花粉の治療薬で、正式名称を「シダキュア スギ花粉舌下錠」と言います。2,000JAUと5,000JAUの2規格があります。同じような薬にシダトレンという液体のお薬があります。

鳥居製薬株式会社HPより
鳥居製薬株式会社HPより

JAU/mLとは「Japanese Allergy Units/mL」という日本アレルギー学会により設定された国内独自のアレルギー活性の単位で、数字が大きいほど高濃度となります。

他のくすりとは何が違う?

花粉症に使われるスタンダードな薬剤として、抗ヒスタミン薬と呼ばれるジャンルのお薬があります。例えば、アレロック(オロパタジン)、タリオン(べポタスチン)、アレグラ(フェキソフェナジン)などです。

ヒスタミンは生体内で以下のような働きをします。

血圧降下、血管透過性亢進、平滑筋収縮、血管拡張、腺分泌促進などの薬理作用があり、アレルギー反応や炎症の発現に介在物質として働く。ヒスタミンが過剰に分泌されると、ヒスタミン1型受容体(H1受容体)というタンパク質と結合して、アレルギー疾患の原因となる(Wikipediaより)。

上記のような反応が起こることにより、鼻水が出たり、くしゃみが出たり、かゆみが出たりします。

抗ヒスタミン薬は、マスト細胞(肥満細胞)などから遊離されるヒスタミンが、ヒスタミン受容体に結合することを防ぐことで、鼻水やくしゃみ、かゆみなどのアレルギー症状を緩和します。

では、シダキュアはどのような働きをしているのでしょうか?

シダキュアは抗ヒスタミン薬と呼ばれるジャンルのお薬ではありません。シダキュアによる花粉症治療は「減感作療法(アレルギー免疫療法)」という免疫療法に基づいて行われています。

減感作療法(アレルギー免疫療法)とは

まずは「減感作療法(アレルギー免疫療法)」について治療薬マニュアル2020より抜粋します。

アレルギー疾患でみられる特定の環境アレルゲンに対する過剰なTh2免疫応答反応を、アレルゲンを増量しながら投与していくことによって是正する根本的治療法である。その作用機序にはアレルゲン特異的なIgG4抗体産生、制御性T細胞の誘導、Th2からTh1への免疫学的偏倚の誘導などが関連する。日本においては、一部からはいまだに減感作療法薬とも呼ばれているが、その作用機序に減感作(脱感作)現象はほとんど寄与しておらず、科学的に妥当ではない。学問的にはallergen immunotherapy(アレルゲン免疫療法)が正しく、World Allergy Organizationをはじめ、国際的にはこの用語が用いられている。したがって、日本アレルギー学会では、刊行物あるいは学術集会などにおいては一貫してアレルゲン免疫療法という表現を用いている。

要するに、減感作療法(アレルギー免疫療法)については、まだ詳しい仕組みはわかっていないが、アレルゲン(花粉)をあえて取り込み続けることによって、過剰な免疫反応を抑えることができるということです。

以下の画像は無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験の結果です。1日1回舌下に最長43週間投与した結果、症状ピーク期(3月中旬~下旬)においてシダキュア投与群では有意にアレルギー症状(くしゃみ、鼻汁、鼻閉)が抑えられています。

シダキュア添付文書より
シダキュア添付文書より

シダキュアの使い方は

シダキュアを使用する前には皮膚反応テスト(スクラッチテスト、プリックテスト、皮内テスト)又は特異的IgE抗体検査を行い、スギ花粉症の確定診断を行います。スギ花粉症であることが確定した人がシダキュアを使用することができます。

シダキュアは通常、投与開始1週間はシダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAUを1日1回1錠を服用します。投与2週目以降は5,000JAUを1日1回1錠を服用します。

また、シダキュアは舌下錠というタイプのお薬になるので、いわゆる舌の下に挿入して使うお薬になります。舌の下の血管や粘膜から吸収させるお薬です。

シダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAU、5,000JAUどちらも舌下にて1分間保持した後、飲み込みます。その後、5分間はうがいや飲食は控えるようにします。

シダキュアの注意点とは

シダキュアの注意点

シダキュアの注意点はあるのでしょうか?

シダキュアはアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす物質)自体を取り込むわけなので、強い免疫反応が起こりすぎる人には使用することができません。初回投与時はアナフィラキシーが起きないか確認するために、30分程度医療機関で安静にしている必要があります。

また、重度の気管支ぜんそく患者の方は使用することができません。気管支ぜんそく患者では症状悪化することがあるので注意が必要です。

血流がよくなると吸収量が増加してしまうので、服用前、服用後2時間はアルコールの摂取や、激しい運動、入浴は控えるようにしましょう。

シダキュアの副作用は?

臨床試験では50.3%の方に副作用が認められたそうです。主な副作用は口腔浮腫(14.4%)、口腔刺激感(14.3%)、耳そう痒症(12.5%)、口腔そう痒症(8.6%)、咽喉頭不快感(7.3%)、口腔内不快感(6.0%)などです。

シダキュア登録医師とは

シダキュアはすべての医師が処方できるわけではありません。シダキュアを処方するためには、舌下免疫療法に関する講義を受講し、その後、e-laerningでも講義を受講して、「適正使用eテスト」という試験を受けて合格する必要があります。

鳥居製薬株式会社 資料(画像はシダトレン)

上記の様に、シダキュアを処方できるのは試験に合格した医師のみです。また、保険薬局は処方医師が試験に合格した登録医師なのかを確認する必要があります。

シダキュアの即効性および治療期間は?

シダキュアはいわゆる抗ヒスタミン薬のような即効性はありません。残念ながら飲めばすぐ効くというようなお薬ではありません。効果が出るためには数か月ほど必要です。

治療期間は少なくとも2年以上、国際的にはアレルゲン免疫療法は最短でも3年以上は治療を行うことが推奨されています(治療薬マニュアル2020より)。

また、スギ花粉症の飛散時期にはスギ花粉に対する反応性が高まっているために、新たに投与を開始しないこととされています。一般的には6~12月ぐらいに治療を開始することが多いようです。

シダキュアは上記に示したように即効性は期待できません。しかし、シダキュアによる治療が著効すれば、スギ花粉に対するアレルギーを軽減することが期待できます。花粉シーズンに服用する抗ヒスタミン薬の量を減らしたり、薬を使用しなくてもよくなるかもしれません。

最後に、シダトレン治療にかかる費用は3割負担の方で、1か月3,000円程度で、年間36,000円前後のようです。ご覧いただきありがとうございました。

 

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