ずっと一緒にいると好きになる?単純接触効果について思うこと

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「単純接触効果」または「ザイアンス効果」という言葉を聞いたことあるでしょうか?簡単に言うと、何回も繰り返し接している間に親近感や好意を感じるようになるという効果です。今回はそんな「単純接触効果(ザイアンス効果)」について自身の意見を交えて深堀していきたいと思います。

単純接触効果とは

単純接触効果

単純接触効果は1960年代後半にアメリカの社会心理学者であるロバート・B・ザイアンスが提唱した効果です。ザイアンスが提唱したためザイアンス効果とも呼ばれています。

単純接触効果とは、繰り返し接することにより親近感や好感度が高まるという効果です。

初めのうちは興味がなかったものも何度も見たり聞いたりすると、次第によい感情が起こるようになってくるという効果。例えば、よく会う人や、何度も聞いている音楽は好きになっていく。これは、見たり聞いたりすることで作られる潜在記憶が、印象評価に誤って帰属されるという、知覚的流暢性誤記俗説で説明されている。また、潜在学習や概念形成といった働きも関わっているとされている。

図形や漢字、衣服、味やにおいなど、いろいろなものに対して起こる。広告の効果も単純接触効果によるところが大きい。CMで露出が多いほど単純接触効果が起きて、良い商品だと思ったり欲しくなったりする(Wikipediaより)。

知覚的流暢性誤帰属説とは、「ある刺激に接触し続けることで,刺激に対する知覚情報処理レベルでの処理効率が上昇することによって刺激への親近性が高まる。この親近性の高まりが,刺激自体への好ましさに誤帰属される」というものです(日本心理学会HPより)。

知覚的流暢性は、刺激への接触経験が想起可能な状態では誤帰属が生じず、その結果として呈示刺激に対する好意的反応が抑制されてしまう。

要するに、同じCMを繰り返して何回も見ていると、自然にそのCMの音楽やキャッチコピーなどを覚えていることがあります。つまり、そのCMに対する処理効率が向上したことを、脳が誤って親近感や好意的な感覚と間違って認識するということです。

単純接触効果の近年の研究

上記に示した通り、知覚的流暢性に基づく単純接触効果では、刺激が想起できる状態において好意的な反応が抑制されるとしています。例えば、洗剤を購入しようとしている時、とある洗剤CMが頭の中に想起されてしまうと、その製品に対する好意的反応が抑制されてしまうということです。

しかし、実際はそうでしょうか?

CMを何回も見て覚えたり、ドラマやアニメの主題歌を何回も聞いているうちに、親近感や好意的な印象を抱いていることの方が多いと思います。

そこで、単純接触効果が生じるには、反復接触による概念形成と既知性(知っているかどうか)が重要であると考えた実験があります。

松田・楠見(2002)においては、従来の実験では同一刺激を反復呈示して学習―未学習項目の好意度を比較していたが、松田らは同一カテゴリーに属するさまざまな事例(たとえば寺カテゴリーであれば,個々の具体的な寺に相当)を呈示することによって,単純に同一刺激の処理効率の向上だけではなく,接触頻度と共通特徴に基づくプロトタイプ(抽象的な寺のイメージ)を中心とした概念形成と,典型的刺激に対する既知感の向上が介在し,好意度が上昇することを示しました。

要するに、その刺激に対して何回も接触することで、まずその刺激に対する概念が形成されます。さらに、その刺激に関連する典型的刺激を与えることで、既知感が増して(≒不確実性が減少して)、好意度が上昇するということです。

松田らの提唱する単純接触効果の概念形成介在モデルでは、接触頻度と典型性が高いほど好意度が大きくなるかと言うと、そういうわけではないようです。

刺激への好意度の判定は、刺激のもつ不確実性が最適な水準にあるときに最大になるとのことです。つまり、接触回数が多すぎてもいけないし、知りすぎもいけないということです。

自分なりに簡潔に単純接触効果を表現すると、「知らないものは嫌だし、ある一定時点まで理解できると興味がなくなる」。そんな感じなのかなと思います。

参考:日本心理学会HP 繰り返して接しているうちにどんどん好きになるのはなぜ?

   松田 憲・楠見 孝(2002). 単純接触効果を支える表象形成過程の検討─概念の典型性が好意度評定と再認判断に及ぼす効果─ 日本心理学会第66回大会発表論集,637.

単純接触効果を仕事や恋愛に活用できるのか

「自然と会う回数を増やして、恋愛にも単純接触効果を活用しましょう」とか「頻繁に営業先にあいさつに行って単純接触効果を利用しましょう」というような言葉を目にすることがあります。

そんなに簡単に単純接触効果を利用することができるのでしょうか?

当たり前ですが、そんなことはないです。実際はそれ以上に様々な要因が関連してくるので、接触回数を増やしただけで、都合の良い結果がもたらされることはありません。

例えば、恋愛で考えてみると、職場などで会う回数を増やしたり(=接触回数を高める)、色々と連絡を取り合って、相手のことを知る(=既知性を高める)とします。最初は連絡できているのでうまくいってるように思うかもしれませんが、ただ相手の情報を集めているに過ぎません。

実際には、相手の年収や職業、年齢、性格や容姿など相手の希望とする条件などいろいろな要因が関わってきます。なので、「単純接触効果があるうちに早めに告白しましょう」とか「単純接触効果は長期になると効果が薄れる」とか、そんなことはあまり、付き合うという結果には影響しないでしょう。

仕事でも同じです。何回も同じ営業先にあいさつに伺った方が単純接触効果が働いて契約がとれるのでしょうか?そんなわけないですよね。一番大切なのは契約内容です。営業に来る人ではありません。

自分もよく車のCMを見て「あの車かっこいいなあ」と思いますが、現実では高額で購入できません。好意度は上がっているのかもしれませんが、実際に行動に移せるかとか、いい結果をもたらすかは、また別次元の話なのです。

自分が思う単純接触効果が生じる時とは

結局のところ、どんな時に単純接触効果が働くのか?簡単に表現するとそれは「どうでもいい時」だと思います。自分に害が生じるわけでもなく、経済的にも影響しない。自分の人生においても特に大した問題でもない。そんな時に単純接触効果は生じるのだと。

例えば、スーパーで洗剤を買おうとしている時、見たことない会社の洗剤を買うよりも、CMで見たり聞いたことのある洗剤を購入するでしょう。

あれはきっと頭の中で、「洗剤だし大きな問題(人体に害を与える)を起こすことはないだろうし、値段も少し安いから別に聞いたことのない安い洗剤でもいいけど…。やっぱり少し高いけど、この聞いたことあるやつの方が洗浄力とか匂いとか良さそうだからこっちにしよう」と考えたりしているはずです。

まさに、この時に単純接触効果が働いてるわけです。本来はちゃんと成分や価格・洗浄力など比較して購入しなければいけないところを、なんとなく見たり・聞いたりしたことのある製品を購入してしまう。自分や人生にとって重要な場面であれば、このような判断はしないはずです。

また、人間は認知的不協和を嫌います。自分の見たり・聞いたりしたことないものは嫌だし、自分の知らないこと・経験したことないことは認めたくないんです。

以上が自分が考えた単純接触効果が生じる時の条件です。

なので、結局なにが言いたいのかというと、単純接触効果に頼るのではなくて、好きな人と付き合いたいなら高い給与をもらうために勉強して偏差値の高い大学に入ったり、容姿に気を使って髪の毛や眉毛を整えたり、自分の性格でダメなところを直したりするほうが、よほど良い結果をもたらすだろうということです。

今回は、単純接触効果について自分の意見を交えて深堀してみました。

最後まで、ご覧いただいた方ありがとうございました。

 

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